浄土寺(じょうどじ)宝篋印塔(越智式)

 浄土寺(じょうどじ)宝篋印塔 (広島県尾道市東久保町20-28)

   宝篋印塔は、塔身と基礎の間に請座を入れるこの地方独特のもので越智式と呼ばれる。南北朝時代前期の在銘作品で、極めて洗練された美しさを見せる

浄土寺(じょうどじ)宝篋印塔(重要文化財、南北朝時代前期 貞和四年 1348年、花崗岩、高さ 320Cm)

塔身、蓮華座上月輪内に金剛界四仏の種子を刻む(正面、タラーク:宝生)
宝篋印塔は、境内東端、如法経塔(宝塔)の隣に立っている。 蓮華座上月輪内に金剛界四仏の種子を刻む(北面、キリーク:阿弥陀)

現在、塔身の金剛界四仏は、正面(西面)が「タラーク(宝生如来、通常南面)」になっており、移動または積替えが行われた際に時計回りに90度進んだ位置に設置されている。

笠 北面

段型は下二段、上六段、隅飾は三弧輪郭付でやや外傾し、内に蓮華座上の月輪を陽刻し八方天の種子を陰刻する。

隅飾りの八方天は八方向を護持する天部で、正面(西面)向って右から時計回りに「ア(火天:東南)」・「エン(閻魔天:南)」、北面が「ニリ(羅刹天:西南)」・「バ(水天:西)」、

東面が「バ-(風天:西北)」・「バイ(多聞天:北)」、南面が「イ(伊舎那天:東北)・「イー(帝釈天:東)」になっていて、塔身と同様に90度 時計回りに進んだ位置に設置されている。

[ 上写真、隅飾りの八方天向って右:「ニリ(羅刹天、西南)」、左:「バ(水天、西)」 ]

塔身、蓮華座上月輪内に金剛界四仏の種子を刻む(背面、アク:不空成就)
蓮華座上月輪内に金剛界四仏の種子を刻む(南面、ウーン:阿閦如来) 宝篋印塔は、南北朝時代前期の極めて洗練された美しさを見せる

請座 (塔身と基礎の間)

基礎と塔身の間に、平面方形で下端が仰蓮の請台が入る。これは、この地方(越智地方)の特色。

越智式と呼ばれる請座の入ったこの地方独特の主な宝篋印塔は、この他、在銘では野間神社宝篋印塔(元亨二年 1322年)長円寺跡宝篋印塔(正中二年 1325年)(今治市)

があり、無銘では大山祇神社宝篋印塔 中央塔(推定 鎌倉時代後期)(今治市)がある。しかし、乗禅寺宝篋印塔 五基(鎌倉後期~南北朝時代)大山祗神社宝篋印塔 東塔

西塔(鎌倉時代後期)、亀井八幡神社宝篋印塔(鎌倉時代後期)(越智郡上島町)を始めとした請座のない通常の宝篋印塔方が数多くあり、越智式は通常型宝篋印塔の荘厳

性を高めたスペシャルな形状といえる。とりわけ、この浄土寺塔と大山祇神社 中央塔が請座も大きく荘厳性に富んでいて洗練された美しさを見せている。・・・・・・・・・・・・・・・・・

相輪は下から、伏鉢、請花、九輪、請花、宝珠で、九輪は深く彫り込まれ、上下の請花も美しい。この地方を代表する宝篋印塔で、完存する。

基礎 背面(東面)

基礎上端は複弁反花、側面は四面とも輪郭を巻き内に格狭間をつくる。

束と格狭間内に刻銘があり、「沙弥行円など四名の逆修や光孝らの追善のため、南北朝時代前期の貞和四年(1348)十月一日に建立された。」

基壇と台座

基壇は切石の二段、台座は蓮弁を彫らずに曲線だけにした繰形座

 浄土寺(じょうどじ)宝篋印塔(尊氏塔)                          石仏と石塔-目次!

浄土寺境内の東端に石造宝塔(納経塔)と宝篋印塔(越智式)が並んで立っている

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*JR 尾道駅前より おのみちバス市内本線東行きに乗車、「浄土寺下バス停」下車 すぐ。

(撮影:平成19年8月12日、平成24年9月23日)