大野寺(おおのでら)弥勒磨崖仏

 大野寺(おおのでら)弥勒磨崖仏(奈良県宇陀市室生区大野1680)

   笠置寺の本尊である弥勒磨崖仏を模して造立された。高さ 約30mの岩壁に、二重円光背を彫りくぼめ、像高13.6mの弥勒如来を線刻する。

大野寺(おおのでら)弥勒磨崖仏(国史跡、鎌倉時代前期 承元二年 1208年、安山岩、高さ 13.6m

二重円光背を深く彫りくぼめ、内部を水磨きして、踏割蓮華座上に立つ弥勒如来像を線刻する。右手は与願印、左手は施無畏印。

踏割(分)蓮華座 [ふみわり(わけ)れんげざ]

弥勒如来は、片足ずつ蓮華座に乗る踏割蓮華座上に立つ

興福寺の 雅縁大僧正が、笠置寺の本尊である弥勒磨崖仏を模して造立することを発願し、承元元年(1207)10月に着工、翌二年(1208)十月に完成した。

造立にあたっては、宗慶という工人が彫り始め、宋人石工 二郎、三郎、五郎、六郎、七郎、八郎が共に彫造したと伝える。(東大寺石獅子も宋人の制作とある)。

宋人石工 伊行末(いのゆきすえ)も、そのなかの一人といわれている。承元三年(1209)三月七日の開眼供養には、後鳥羽上皇も行幸された。

磨崖仏の左側下方に刻まれた尊勝曼荼羅(鎌倉時代前期)

大円内部中央月輪内に金剛界大日如来の種子「バン」、周囲に八大仏頂の種子を月輪内に刻む。月輪外下方、向かって左に

三角形の彫りくぼめをつくり内に不動明王の種子「カーン」、右に半月形の彫りくぼめをつくり内に降三世明王の種子「ウーン」を

む。上方にも梵字を刻むが磨滅している。尊勝曼荼羅は、滅罪・延命・出産・祈雨などを目的として修される尊勝法の本尊。

八大仏頂:百傘蓋(びゃくさんがい)・最勝(さいしょう)・尊勝(そんしょう)・放光(ほうこう)・勝(しょう)・広勝(こうしょう)・無辺声(むへんじょう)・発生(ほっしょう)

大野寺に咲いていた百日紅の花

大野寺(おおのでら)弥勒磨崖仏 全景

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大 野 寺 (真言宗室生寺派)

大野寺は室生寺の末寺として役行者が開き、弘法大師空海が天長元年(824)に堂宇を建立したと伝えられる

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*近鉄電車「室生口大野駅」下車 徒歩 約5分。

(撮影:平成16年7月25日、平成22年12月22日)