山根(やまね)六角塔婆(六面石幢)(埼玉県入間郡毛呂山町宿谷39-1)
第一面に「六角塔婆」と刻まれた六面石幢で、南北朝時代前期 貞和二年(1346)の紀年銘がある。
山根六角塔婆(県指定文化財、南北朝時代前期 貞和二年 1346年、緑泥片岩、高さ 112Cm 幅 34Cm)
板石(緑泥片岩)の表面を頭部山形・二条線の板碑形に彫り、六枚で石幢をつくり、上部に六角形の屋根石を載せる。現状、塔身の一枚を欠失する。 |
屋根石
緑泥片岩の板石で、幅103Cmの六角形
塔身 頭部
頭部山形、下に二条線の板碑形を彫刻する。額部は薄く突出させ、身部は輪郭をつくる。
山根(やまね)六角塔婆 第一面の種子と銘文
板碑形の上方、蓮華座を刻まず月輪内に不動明王の種子「カーンマーン」を薬研彫し、下方に造立趣旨・紀年銘等を刻む。
身部上方、不動明王の種子「カーンマーン」
この面のみ、蓮華座が刻まれていない。
第一面、板碑形に刻まれた種子と銘文 | 身部下方の銘文 |
刻銘は中央に「貞和二暦(1346)丙戌初冬中旬、敬白」、向かって右に「右発起大徳道教、為先上与存生、建立」、
左に「六角塔婆、願似此功、自他同証、無上菩提」と刻む。
貞和二年(1346)初冬中旬に大徳道教が発起して、追善・逆修の為にこの六角塔婆を建立した。他の面に刻まれている妙善、善阿、迎念、西念、妙圓等も参加している。
山根(やまね)六角塔婆 第二面の種子と偈文
板碑形の上方、蓮華座上月輪内に胎蔵界大日如来(五点具足)の種子「アーンク」を薬研彫し、下方に般若心経秘鍵に出る偈(げ)を刻む。
身部上方、胎蔵界大日如来(五点具足)の種子「アーンク」
第二面、板碑形に刻まれた種子と偈文 | 身部下方、般若心経秘鍵の偈(げ)と「妙善、逆修」の名を刻む。 |
「般若心経秘鍵」に出る偈(げ)
偈(げ):「行々至円寂(ぎょうぎょうしえんじゃく)去々入原初(ここにゅうげんしょ)三界如客舎(さんがいにょかくしゃ)一心是本居(いっしんぜほんこ)」
[ 行き行きて円寂(涅槃)に至り、去去として原初に入る。三界は客舎(仮の住い)のごとく、自心のみが本覚の住いである ]
山根(やまね)六角塔婆 第三面の種子と偈文
板碑形の上方、蓮華座上月輪内に釈迦如来の種子「バク」を薬研彫し、下方に法華経如来寿量品に出る偈(げ)を刻む。
身部上方、釈迦如来の種子「バク」
第三面、板碑形に刻まれた種子と偈文 | 身部下方、法華経如来寿量品の偈(げ)と「善阿、敬白」の名 |
「法華経如来寿量品」に出る偈(げ)
偈(げ):「常在霊鷲山(じょうざいりょうじゅせん)及余諸住処(ぎゅうよしょじゅうしょ)我此土安穏(がしどあんのん)天人常充満(てんにんじょうじゅうまん)」
[ (釈迦は)常に霊鷲山及び諸々の住み家にあり、我がこの土地は安穏にして、天人常に充満せり ]
山根(やまね)六角塔婆 第四面の種子と偈文
板碑形の上方、蓮華座上月輪内に薬師如来の種子「バイ」を薬研彫し、下方に梵網経に出る偈(げ)を刻む。
身部上方、薬師如来の種子「バイ」
第四面、板碑形に刻まれた種子と偈文 | 身部下方、梵網経の偈(げ)と「迎念、敬白」の名 |
「梵網経」に出る偈(げ)
偈(げ):「衆生受仏戒(しゅじょうじゅぶつかい)即入諸仏位(そくにゅうしょぶつい)位同大覚位(いどうだいかくい)真是諸仏子(しんぜしょぶつし)」
[ 衆生は仏戒を受けて、ただちに諸仏の位に入る。その位は大覚(大いなる悟り)と同じであり、まことにこれ諸仏子なり ]
山根(やまね)六角塔婆 第五面の種子と偈文
板碑形の上方、蓮華座上月輪内に金剛界大日如来(五点具足)の種子「バーンク」を薬研彫し、下方に般若心経秘鍵に出る偈(げ)を刻む。
身部上方、金剛界大日如来(五点具足)の種子「バーンク」
第五面、板碑形に刻まれた種子と偈文 | 身部下方、般若心経秘鍵の偈(げ)と「西念、妙圓」の名を刻む。 |
「般若心経秘鍵」に出る偈(げ)
偈(げ):「真言不思議(しんごんふしぎ)、観誦無明除(かんじゅむみょうじょ)、一字含千里(いちじがんせんり)、即身証法如(そくしんしょうほうにょ)」
[ 真言は不思議なり、観誦すれば無明を除き、一字に千里を含み、この身ながらに真理を証す ]
山根六角塔婆(六面石幢)(県指定文化財、南北朝時代前期)
第六面は失われ、六角形の台石の上に立っている。第一面には、六角塔婆と刻まれている。
六角塔婆は、金網で保護された六角形のケージの中に立っている
*JR八高線 毛呂駅の北側約200mの「もろバス 福祉会館バス停」からやぶさめ号山コースに乗車、「総合公園バス停」下車、南方向へ 約800m。
(撮影:平成24年4月19日)