護国寺(ごこくじ)(山口県防府市本橋町2-11)
塔身正面に阿弥陀三尊、背面に胎蔵界中台八葉院を種子で表し、両側面に大日法身真言を配した五輪塔を刻む笠塔婆で、鎌倉時代前期 貞永元年(1232)の銘がある。
護国寺笠塔婆(県指定文化財、鎌倉時代前期 貞永元年 1232年、凝灰岩、笠・露盤上まで高さ 89Cm)
塔身正面は、下端部に縦連子と三巴文、その上全面に珠文を配した輪郭を巻き、内部には蓮華座上の月輪の中に阿弥陀三尊の種子を表す |
阿弥陀三尊は、上に大きく阿弥陀如来の種子「キリーク」、向かって右下に観音菩薩の種子「サ」、左下に勢至菩薩の種子「サク」を刻む。
梵字の部分は、浅い平底彫りで、黒色に塗っている。尚、塔身の上端と下端に枘(ほぞ)が作りだされ、笠と基礎に挿入するようになっている。
請花・宝珠 (後補)
当初の宝珠は欠失し、別物を載せる。
笠、
笠は寄棟造になり、軒反(のきぞり)・屋根勾配とも緩やかで、頂部に露盤を刻出する。、
塔身背面、下端部に縦連子と三巴文、その上に珠文を配した輪郭を巻き、内に胎蔵界中台八葉院を種子で刻み、下に銘文を配する |
胎蔵界曼荼羅 中台八葉院
中台八葉院は大きな蓮華座の上方、中央に大日如来、八葉の弁 各月輪内に下記の種子を刻む
弥勒菩薩の種子「ユ」 | - | - | 宝幢如来の種子「ア」 | - | - | 普賢菩薩の種子「アン」 |
-- | - | - | -- | -- | - | - |
天鼓雷音の種子「アク」 | - | - | 胎蔵界大日如来(五点具足)の種子「アーンク」 | - | - | 開敷華王の種子「アー」 |
- | - | - | - | - | - | - |
観自在菩薩の種子「ボ」 | - | - | 無量寿如来の種子「アン」 | - | - | 文殊菩薩の種子「ア」 |
中央の大日如来と四如来(黄文字色)・四菩薩(青文字色)
塔身下方の銘文
銘文:「右志者過去、尊霊刑阝(部)、中子」「為出離生死、往生極楽」「貞永元年(1232)壬辰、九月廿九日、末時逝去」
鎌倉時代初期 貞永元年(1232)、刑部(いさかべ)氏が中子(なかつこ)の供養の為、極楽往生を願って建立した。
中子(仲子)(なかつこ、なかち、なかちこ):次男または長子・末子以外の男子。
塔身、向って左側面(南面) | 塔身、向って右側面(北面) |
塔身の両側面は、珠文を配した輪郭の内に、大日法身真言「ケン、カン、ラン、バン、ア」を配した五輪形を蓮華座上に線刻する。
大日法身真言:「ケン(空輪)、カン(風輪)、ラン(火輪)、バン(水輪)、ア(地輪)」
塔身、下端
珠文を配した輪郭の下、縦連子と三巴文(みつどもえもん)を交互に配している。
基礎 正面
正面と背面は、側面を三区に分け、それぞれ線刻の月輪内に種子「ア」を平底彫りする。
基礎 側面
両側面は、二区に分け、それぞれ線刻の月輪内に種子「ア」を平底彫りする。
俳人 種田山頭火の墓所(山口県防府市本橋町2-11、護国寺内墓地)
種田 山頭火(たねだ さんとうか)の墓所
自由律俳句の著名な俳人、種田山頭火は山口県防府市の生まれ、ここ護国寺には、山頭火の墓所がある。
護国寺(ごこくじじ)(曹洞宗)
*JR山陽本線 「防府駅」下車、北西方向へ徒歩 約21分。笠塔婆は門内左手、覆屋の中に安置されている。
(撮影:平成24年9月21日)