鵜殿(うどの)磨崖仏(4)

 鵜殿(うどの)磨崖仏(佐賀県唐津市相知町相知和田)

  鵜殿(うどの)磨崖仏群には、崩落した岩塊に不動明王像や仏坐像、韋駄天を自由奔放に刻んだものがある。

 鵜殿(うどの)磨崖仏、不動明王像

  崩落した岩塊に刻まれている不動明王で、正面部の不動明王と似た、おどろおどろしい作風。

鵜殿(うどの)磨崖仏、不動明王像 (県指定史跡、凝灰岩)

右手に利剣を持つが、左手は羂索ではなく蛇(へび)を持つ。髪は弁髪ではなく、逆立っている。儀軌(ぎき)を無視し、奔放に刻まれている。

崩落した岩塊に刻まれた不動明王と三体の仏坐像

崩落した岩塊の表面をキャンバスに見立て、自由奔放に描く現代絵画の様な雰囲気がある。

不動の右下、向かって右から二番目の仏坐像 不動の右下、向かって右端の仏坐像

三体の仏坐像は、龕を彫りくぼめた中に半肉彫りされ、着色されている。

 鵜殿(うどの)磨崖仏、如来坐像と韋駄天像

仏坐像二体と韋駄天(いだてん)像

上記、不動明王・三仏の向かって左横に置かれている。崩落した岩石に刻まれた仏坐像二体と韋駄天像を半肉彫りし、彩色がなされている。

向かって左端の仏坐像 向かって右端の仏坐像

二体の仏坐像は、龕を彫りくぼめた中に半肉彫りされ、着色されている。

韋駄天(いだてん)像

身体は反り気味に、左手は右手に添え頭髪をなびかせて駆けている。

韋駄天は、南方守護の武神 増長天の八将の一つに数えられ、四天王に従属する三十二将の長とされる俊足の神。

韋駄天(スカンダ)(ニューデリー国立博物館) 韋駄天(スカンダ)(チェンナイ州立博物館)

仏教に取り入れられ韋駄天と呼ばれる。ヒンドゥー教では、スカンダ (カールティケーヤ、クマーラ)と呼ばれている

ヒンドゥー教では、スカンダ(韋駄天)は、シヴァとパールヴァティの息子とされ、孔雀を乗物とする軍神。

 鵜殿(うどの)磨崖仏、十一面観音像

  磨崖仏群の正面(南面)、東端をまわって崖際の小道を歩くと仏坐像を刻んだ小さな龕が多数ありその中心、やや上方に十一面観音坐像が刻まれている。

鵜殿(うどの)磨崖仏、十一面観音坐像 (県指定史跡、凝灰岩)

結跏趺坐し、両手は胸前で合掌する。頭部に十一面を表す観音を刻んでいる。

人がどこにいても見守り、顔を向けていてくれる、という人間の欲望が十一面観音を作り出したという。

インドでは、「カンヘーリー石窟寺院 第41窟」に一例だけの十一面観音菩薩立像(6世紀末~7世紀前期)

正面から東端をまわった小道沿いの仏たち

小洞窟の入口には、武神が刻まれている

十一面観音の手前、小龕内の仏坐像

 磨崖仏群、正面前方の仏坐像

正面の崩落仏

磨崖仏群の正面(南面)前方にある。小龕内に刻まれた仏坐像と同種のものが崩落、成形の上置かれたものと思われる。

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鵜殿(うどの)磨崖仏群正面 (県指定史跡、南北朝時代~江戸時代、凝灰岩)

 石  仏-紀年順-目次

*JR唐津線 「相知(おうち)駅」下車、西方向へ 約1.8Km。相知駅構内に、観光者用無料レンタサイクルがある。

(撮影:平成24年1月28日)