風浪神社(ふろうじんじゃ)五重石塔

 風浪宮(ふうろうぐう)(福岡県大川市酒見726-1)

  装飾豊富な石塔で、軸部や屋根が精緻な彫刻で荘厳されている。南北朝時代前期 正平十年(1355)の南朝銘がある。

風浪神社五重石塔(重要文化財、南北朝時代前期 正平十年 1355年、凝灰岩、高さ 326Cm)

初層軸部(正面)、二重光背型を彫りくぼめ蓮華座上に大日坐像を刻む
五重石塔は、拝殿に向かって左手、覆屋の中に立っている 初層西面、二重光背型を彫りくぼめ蓮華座上に阿弥陀坐像を刻む

初層軸部は光背型を彫りくぼめ、蓮華座上に如来坐像を厚肉彫りする。東面 阿閦、南面は宝生に代わって大日、西面 阿弥陀、北面 不空成就を刻み、金剛界四仏の形をとる。

初層 屋根

軒口厚く反りが強い。軒下に垂木型・隅木をつくり、屋根の大棟に珠文帯、降棟に鬼面を配す。

初層北面、二重光背型を彫りくぼめ蓮華座上に不空成就坐像を刻む
初層北面、二重光背型を彫りくぼめ蓮華座上に阿閦坐像を刻む 二層の軸部のみ、正面に阿弥陀像が刻まれ、他の三面は素面

初層 屋根

軒下に細かく垂木型、軒先には隅木を刻出し、四隅の降棟(くだりむね)に鬼面を刻む。

二層屋根、鬼面のつくりが、他層と変わっている
各層、屋根・軸部を別石にする。塔形は、屋根の出が少なく細長い 五層屋根には蟠竜を刻み出し、露盤・伏鉢の部分は龍尾を表す。

五重石塔は、保護の為現在の覆屋に立っているが、以前は拝殿の前にあった。

基 礎

頂部は、一段の段型をつくる。四面に長文の刻銘がある。

基礎南面の刻銘

刻銘:「奉造立、筑後州酒見村、當所九十九所大権現之御宝前、五重石塔一基、・・・・」

基礎西面の刻銘

刻銘:「・・・・者為、天長地久、御願円満、国土豊饒、殊當村安穏、万民快楽乃至法界平等利益」

基礎北面の刻銘

刻銘:「口也仍所、奉造立如件、旹正平十年(1355)、乙未、十月日」

基礎南面の刻銘

刻銘:「願主沙弥道慧、沙弥道一、大工 藤原介嗣、敬白」

筑後 酒見村、当所九十九大権現の宝前に造立する五重石塔で、天長地久、御願円満、当村安穏、万民快楽、法界平等利益を願って正平十年(1355)に沙弥

道慧と沙弥道一により建立された。大工の介嗣は、助継・助次とも書き、この地方から熊本県にかけて多くの作品を残している。本石塔は、介嗣の代表的作品。

二層軸部 正(南)面、阿弥陀坐像 三層軸部 正(南)面、宝生如来坐像

正面(南面)軸部の如来像

如来像は、二重光背型を彫りくぼめ蓮華座に坐す如来像を半肉彫りする。二層の軸部は、正面のみ阿弥陀坐像(上、左写真)が刻まれ、他の三面は素面。

四層軸部 北面、楽器を奏でる天女二人

天女像は陽刻になっている。

三層軸部 西面、地蔵菩薩 四層軸部 西面、幡を持つ飛天

西面軸部の彫像

地蔵菩薩は、二重光背型を彫りくぼめ蓮華座に坐す姿を半肉彫りする。飛天は陽刻。

三層軸部 東面、普賢菩薩

象に乗った普賢菩薩が陽刻されている。

五層軸部 北面、琴を弾く人物を陽刻する。 四層軸部 東面、飛天が陽刻されている。

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風浪宮 拝殿・本殿

本殿は室町時代後期 永禄三年(1560)の再建で、重要文化財に指定されている。(三間社流造、桧皮葺)

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*JR鹿児島本線 羽犬塚駅前から西鉄バス大野島農協前行きに乗車、「大川市役所前バス停」下車、北東方向へ徒歩 約7分。又は、西鉄柳川駅前から西鉄バス 佐賀バスセンター行きに乗車、「中原高木病院バス停」下車 北東方向へ徒歩 約10分。

(撮影:平成24年1月29日)