稲葉崎(いなばさき)種子二連板碑

 稲葉崎(いなばさき)種子二連板碑(鹿児島県姶良郡湧水町稲葉崎)

  黄金塔の向かって左側背部、道性・妙性 夫妻の逆修供養塔群の横に立つ。珍しい二連板碑で、追善供養塔として造立された。文和四年(1355)の銘がある。

稲葉崎 種子二連板碑 (県指定史跡、南北朝時代前期 文和四年 1355年、凝灰岩、高さ 147Cm 下幅 48Cm)

二基を一石で作る二連板碑、左右の高さが異なり、高さの差は、7.6 Cm。各々、身部上方に種子、その下に四句の偈、その下に銘文を刻む。

板碑 頂部

頭部山形、下に二段の切込、額部は縦に長く突出する。

身部上方は、向かって左側に金剛護菩薩の種子「カン」、右側に、胎蔵界大日如来の種子「ア」を薬研彫する。

般若心経秘鍵に出る偈(げ) 涅槃経に出る諸行無常の偈(げ)

身部種子の下、向かって左に般若心経秘鍵に出る偈(げ)、と右に涅槃経に出る偈(げ)を刻む。

  向かって右側、碑の刻銘

涅槃経に出る諸行無常の偈(げ)

(げ):「諸行無常(しょぎょうむじょう)」「是生滅法(ぜしょうめっぽう)」「生滅々已(しょうめつめつい)」「寂滅為楽(じゃくめついらく)

[ 諸行は無常である。これ生滅の法である。生滅を滅しおわりて、生も滅もない寂滅を楽しみとする。]

下部に刻まれた刻銘 向かって右方碑、身部

右側碑、下部の刻銘

刻銘:「右志趣者、為過去尊霊成仏得道、乃至法界衆生平等利益也、相当一周忌」

(一周忌にあたり、聖霊の成仏を願って、追善供養として造立した。一周忌に当たる人の法名は刻まれていない)

  向かって左側、碑の刻銘

般若心経秘鍵に出る偈(げ)

偈(げ):「真言不思議(しんごんふしぎ)、観誦無明除(かんじゅむみょうじょ)、一字含千里(いちじがんせんり)、即身証法如(そくしんしょうほうにょ)

[ 真言は不思議なり、観誦すれば無明を除き、一字に千里を含み、この身ながらに真理を証す ]

下部に刻まれた刻銘 向かって左方碑、身部

左側碑、下部の刻銘

刻銘:「右志趣者、為過去尊霊妙圓、成仏得道、乃至法界郡生而已

「文和二二(四)(1355)乙未十一月十五日、相当第三年、孝子等敬白」

(妙円の三年忌にあたり、聖霊の成仏を願って、子息等がこの碑を南北朝時代 文和四年(1355)に造立した。)

板碑、最下部の刻銘(両側)

一周忌と三周忌にあたる、亡き父母と思われる人の為、追善供養として子息等により造立された。

この地域にある二連板碑は、すべて左右の高さが異なっている 刻銘:「文和二二(四)(1355)乙未十一月」

  稲葉崎(いなばさき)供養塔群

稲葉崎(いなばさき)供養塔群 (県指定史跡、南北朝時代前期、凝灰岩)

角塔婆①から④の自然石塔婆までは、道性、妙性のどちらか、あるいは両者の逆修塔婆。

二連板碑は、⑤にあたる。二連板碑の位置が樹木と⑥の角塔婆のすぐ後ろにある為、観察しにくい。

 稲葉崎(いなばさき)胎蔵界四仏種子角塔婆                    石仏と石塔-目次!

稲葉崎(いなばさき)供養塔群 (県指定史跡、南北朝時代前期、凝灰岩)

二連板碑は、④の妙性三年相当 逆修供養塔の横に立っている⑤で、⑥は康永二年(1343)銘の角塔婆。

 板碑(いたび)

*JR肥薩線 栗野駅前から南国交通バス 鹿児島空港行きに乗車、「稲葉崎上バス停」下車、北方向へ 徒歩 約3分。または、ふるさとバス(轟方面)に乗車「稲葉崎上バス停」下車。轟(とどろき)簡易郵便局の北側の山あたりが稲葉崎供養塔群。

(撮影:平成24年1月25日)