沢家墓地(さわけぼち)(鹿児島県霧島市隼人町神宮5-579-17)
四方を板碑に囲まれた墓地中央に三重石塔と五輪塔二基が立っている。三重石塔は、鎌倉時代中期 延応元年(1239)の紀年銘がある。
沢家墓地(さわけぼち)三重石塔 (市指定文化財、鎌倉時代中期 延応元年 1239年、凝灰岩)
初層軸部 正面、無量寿(阿弥陀)の種子「アン」を薬研彫する | ||
三重石塔は、墓地中央の向かって左側に立っている | 初層軸部 西面、阿弥陀如来の種子「キリーク」を薬研彫する |
初層軸部、正面には荘厳点のついた種子「アン」、背面には荘厳点のない「アン」が刻まれている。「アン」は、無量寿(胎蔵界 阿弥陀)で、普賢菩薩の意もある。
また、板碑では胎蔵界大日如来として刻まれていることもある。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
初層 屋根
屋根と軸部は別石。軒は、緩く反り上がり、軒下は二軒繁垂木、軒先には隅木や尾垂木を細かく刻出する。
初層軸部 背面、無量寿(阿弥陀)の種子「アン」を薬研彫する | ||
初層軸部 東面、種子「アーン」を薬研彫する(尊名 不明) | 三重石塔は、相輪と三層目屋根を欠失する |
初層軸部 東面の種子は、荘厳点のついた「アン」に修行点がつくので読みは「アーン」と知れるが、尊名は不明。嘉禎三年(1237)銘の石塔婆と同様、尊名の不明な種子。
二層 屋根
屋根と軸部は別石。軒は、緩く反り上がり、軒下は二軒繁垂木、軒先には隅木や尾垂木を細かく刻出する。
二層目軸部 正面、毘沙門天(多聞天)の種子「バイ」を薬研彫する | ||
軸部に刻まれた四方仏の種子は、配列が他に類例がない | 初層目軸部 西面、阿弥陀如来の種子「キリーク」を薬研彫する |
基 礎
ほぼ正方形で、一石。西面に「延応元年(1239)、九月六日」の刻銘がある。
二層目軸部 背面、薬師如来の種子「バイ」を薬研彫する | ||
二層目軸部 東面、金剛護菩薩の種子「カン」を薬研彫する | 基礎西面の刻銘:「延応元年(1239)、九月六日」 |
二層目軸部と基礎の刻銘
二層軸部 東面の種子「カン」、は他に馬頭観音の意もある。
三層目軸部 正面、金剛界大日如来の種子「バン」を薬研彫する | 三層目軸部 西面、釈迦如来の種子「バク」を薬研彫する |
三層目 軸部
三層目軸部 背面、観音菩薩の種子「サ」を薬研彫する | 三層目軸部 東面、宝生如来の種子「タラーク」を薬研彫する |
三層目 軸部
三層、各々の軸部に刻まれた四方仏は、金剛界四仏、胎蔵界四仏、顕教四仏の様な決められた配列ではなく、他に類例がない。
沢家墓地(さわけぼち)五輪塔
沢家墓地内に、三重石塔が西側に一基、中央と東側に五輪塔が計二基立っている。
沢家墓地(さわけぼち)五輪塔 東塔 (市指定文化財、鎌倉時代、凝灰岩)
東塔、風・空輪は別物。水輪の四面に金剛界四仏の種子を刻む | 五輪塔中央塔、水輪を二つ載せた寄せ集め塔 |
沢家墓地(さわけぼち) 全景
入口の中央に立つ石塔婆は、嘉禎三年(1237)の紀年銘がある。
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*JR日豊本線 「隼人駅」下車、北東方向へ 徒歩 約18分。隼人駅前の県道473号線を北方向に道なりに行く。鹿児島神宮の赤い鳥居のある交差点を左手に見て、更に真直ぐ道なりに歩くと沢家墓地への案内標識がある。
(撮影:平成24年1月24日)