熊野(くまの)磨崖 種子曼荼羅(大分県豊後高田市田染平野字登沢)
熊野磨崖仏 大日如来像の頭部上方に、三面の種子曼荼羅が刻まれている。三面は、理趣教曼荼羅と両界曼荼羅だが、ここ独自の曼荼羅となっている。
大日如来 頭部上方の種子曼荼羅 三面
頭部上方中央に、愛染明王を中心とする理趣教(りしゅきょう)曼荼羅、左右に金剛界・胎蔵界の両界曼荼羅、計三面が配されている
熊野磨崖仏(くまのまがいぶつ)大日如来像
熊野磨崖仏(くまのまがいぶつ)大日如来像 (国史跡、重要文化財、平安時代後期、凝灰岩、高さ 682Cm)
躰部は岩面に沿って反身になり、円光背の上に三面の種子曼荼羅が刻まれている
理趣教(りしゅきょう)種子曼荼羅
中心、二重月輪下部に蓮華座を刻み中央に愛染明王の種子「ウーン」を刻む。上下、左右、周辺に、諸菩薩・諸天の種子 十六を刻み
大月輪で閉じる。この曼荼羅は、通例と異なり、ここ独自の変形といわれている。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
熊野(くまの)磨崖 金剛界種子曼荼羅(向かって左面)
金剛界(こんごうかい)種子曼荼羅
九等分された曼荼羅からなり、各曼荼羅を会(え)と呼ぶ呼ぶことから九会(くえ)曼荼羅とも呼ばれる。月輪内に会(え)が構成され、
会(え)は中心部を除き、各五個の種子が刻まれている。中心部は二重月輪の下部に蓮華座を刻み、中央に梵字「アン」を刻む。梵字
「アン」は通常、阿弥陀如来(胎蔵界)・普賢菩薩の種子として知られる。中央上方の月輪内には、中央に金剛界大日如来の種子「バン」
が刻まれ、その四方に種子を刻む。金剛界曼荼羅の通例では、中心部は成身会(じょうしんえ)と呼ばれ、金剛界大日如来を中心とした
金剛界五仏が刻まれ、その上方は一印会(いちいんえ)と呼ばれ金剛界大日如来が一尊だけ表現される。この地の金剛界曼荼羅は、成
身会に梵字「アン」が刻まれ、胎蔵界の匂いがする変形となっている。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
胎蔵界(たいぞうかい)種子曼荼羅
中心の中台八葉院から最外院まで、胎蔵界曼荼羅を形作る。中台八葉院の中核部に二重月輪をつくり蓮華座上の金剛界大日如来の
種子「バン」を刻む。胎蔵界曼荼羅であれば、胎蔵界大日如来(アーク)を刻むのが通例。また、開花した八葉の蓮弁に刻まれた種子も
通例とは異なり、独自の変形となっている。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
尚、石に刻まれた両部曼荼羅は、京都府向日市「来迎寺両部曼荼羅」、奈良県高取町の「香高山(こうこうさん)両部曼荼羅」等がある。
熊野磨崖 神像(くまのまがいしんぞう)・二体
熊野磨崖 神像(くまのまがい しんぞう)
不動明王の、向かって右下方に方形の龕(がん)が二つ刻まれ、内に男神像が二体刻まれている。
熊野磨崖仏(くまのまがいぶつ) (国指定史跡、重要文化財、平安時代後期、 凝灰岩、不動明王像 高さ 807Cm、大日像 高さ 682Cm)
胎蔵寺(たいぞうじ)(天台宗)
胎蔵寺(たいぞうじ)(天台宗)
熊野磨崖仏の拝観入口にあたる。
直径54Cmの青銅製の円盤に、阿弥陀三尊を陽鋳した「胎蔵寺縣仏」(建武四年:1337年銘、県文)がある
胎蔵寺 境内、国東塔や石仏が置かれている | 胎蔵寺 門前の不動石仏 |
*胎蔵寺から、山道を登り、さらに自然石の乱積石段を登ると、左手に熊野磨崖仏が見えてくる。
(撮影:平成23年3月16日 他)