慈光寺(じこうじ)十三仏種子板碑

 慈光寺(じこうじ)(埼玉県比企郡ときがわ町西平386)

  十三仏板碑としては、初期のもので南北朝時代 康永四年(1345)の紀年銘がある。

慈光寺 十三仏種子板碑県指定文化財、南北朝時代前期 康永四年 1345年、緑泥片岩、高さ 150Cm 下幅 40Cm

身部は一重の輪郭を巻き、十三仏を蓮華座上月輪内に刻む。十三仏の向かって右側下方に康永四年(1345)の紀年銘がある

板碑 上部

山形の左部を欠損、下に二段の切込。塔身は、一重線の輪郭を巻く。

身部の刻銘

身部、十三仏の向かって右側に「但口楽口転大口致口乃至口不捨 康永四年(1345)二月・・」

、左側に「右者造立口道・・・・可口口之敬文」の刻銘があるが、磨滅してほとんど判読できない。

十三仏種子は、最上に胎蔵界大日「アーンク」、その下、向かって右列 上から 「カーン(不動)・バク(釈迦)・アン(普賢)・マ(文殊)・カ(地蔵)

(弥勒)・蓮華座、左列は 上から 「バイ(薬師)・サ(観音)・サク(勢至)・キリーク(阿弥陀)・バン(阿閦)・バーンク(金剛界大日)・蓮華座

十三仏 最上段

⑬.胎蔵界大日如来(三十三回忌)の種子「アーンク」

虚空蔵菩薩に代わって、胎蔵界大日如来(五点具足)の種子「アーンク」が刻まれている。

十三仏は、死者の追善供養のために①.初七日(不動)、②.二七日(釈迦)、③.三七日(文殊)、④.四七日(普賢)、⑤.五七日(地蔵)、⑥..六七日(弥勒)、⑦.七七日(薬師)

⑧.百ヶ日(観音)、⑨.一周忌(勢至)、⑩.三回忌(阿弥陀)、⑪.七回忌(阿閦)、⑫.十三回忌(大日)、⑬.三十三回忌(虚空蔵)の十三仏事にわりあてられた仏・菩薩をいう。

⑦.薬師如来(七七日) ①.不動明王(初七日)
(バイ) (カーン)

十三仏 二段目

二段目右側、初七日の不動明王から始まり、最上段、三十三回忌の胎蔵界大日如来で終わる。

⑧.観音菩薩(百ヶ日) ②.釈迦如来(二七日)
(サ) (バク)

十三仏 三段目

⑨.勢至菩薩(一周忌) ④.普賢菩薩(四七日)
(サク) (アン)

十三仏 四段目

④.普賢菩薩(アン)と五段目の③.文殊菩薩(マ)が入れ替わっている。

⑩.阿弥陀如来(三回忌) ③.文殊菩薩(三七日)
(キリーク) (マ)

十三仏 五段目

③.文殊菩薩の種子は「マン」で、ここでは「マン」の空点が欠けた「マ」で表している。

⑪.阿閦如来(七回忌) ⑤.地蔵菩薩(五七日)
(バン) (カ)

十三仏 六段目

⑪.阿閦如来の種子は「ウーン」で、ここでは「バン(金剛界大日如来)」で別体の種子をあてている。

石村喜英氏は、板碑の総合研究(1)総論編(柏書房)、「題目、名号、十三仏板碑」項で、「密教教理の立場では、大日如来は万徳を保持する仏尊で

あり、その一部の得をつかさどるのが諸仏諸尊であるとする教義上の論理からは、大日如来の種子は諸仏諸尊に通ずることになろう」と述べている。

 慈光寺(じこうじ)阿弥陀種子板碑(断碑)                          石仏と石塔-目次!

⑫.金剛界大日如来(十三回忌) ⑥.弥勒菩薩(六七日)
(バーンク) (ア)

十三仏 最下段

⑥.弥勒菩薩の種子は通常「ユ」だが、ここでは「ア(弥勒)」で表している。

 板碑(いたび)

*東武東上線 武蔵嵐山駅西口またはJR八高線 明覚駅前から「ときがわ町路線バス」に乗車、「せせらぎバスセンター」で乗り継ぎ「慈光寺バス停」下車、バス道を少し下る。又は、「慈光寺入口バス停」下車 徒歩 約30分。

(撮影:平成20年3月23日、平成24年4月20日)