円満寺(えんまんじ)阿弥陀一尊種子板碑

 円満寺(えんまんじ)(埼玉県熊谷市妻沼台916)

  板碑は、門内左手にある小堂の本尊として祀られている。鎌倉時代中期 文永二年(1265)の在銘。

円満寺 阿弥陀一尊種子板碑(鎌倉時代中期 文永二年 1265年、緑泥片岩、高さ 140Cm 下幅 45Cm)

頭部山形、下に二段の切込、身部は上方に荘厳体で阿弥陀種子「キリーク」、その下蓮華座上月輪内に「慈父」と刻む。

その両側に釈迦三尊の種子と阿弥陀三尊の種子を刻み、下方中央に紀年銘、その両側に「帰三宝偈」にある「弥陀本誓願」の偈を刻む。

板碑 頭部

頭部は低い山形、下に二段の切込、身部は一重線の輪郭を巻く。

上方、蓮華座上に阿弥陀の種子「キリーク」を荘厳体で大きく刻む 本尊として祀り、疱瘡(ほうそう)平癒を祈る信仰があったという

身部、阿弥陀種子下の刻銘 (拓本)

中央に別枠で輪郭をつくり、蓮華座上月輪内に「慈父と刻む。その向かって右に上から釈迦如来の種子「バク」、普賢菩薩の種子「アン」、文殊菩薩の種子

「マン」を刻み釈迦三尊とする。左側は、上から阿弥陀如来の種子「キリーク」、観音菩薩の種子「サ」、普賢菩薩の種子「サク」を刻み阿弥陀三尊とする。

身部、阿弥陀種子下の刻銘 (写真)

身部下方、紀年銘の両側に帰三宝偈を刻む 下方中央の刻銘:「文永二年(1265)九月十日」

月輪内に刻まれた「慈父」の刻銘の下に、「文永二年(1265)九月十日」の紀年銘、その下方両側に「帰三宝偈」にある「弥陀本誓願」の偈を刻む。

「帰三宝偈」にある偈(げ)

偈(げ):「弥陀本誓願(みだほんせいがん)、極楽之要門(ごくらくしようもん)、定散等回向(じょうさんとうえこう)、即証無生身(そくしょうむしょうしん)

[ 弥陀の本誓願は、極楽への要門なり、心 定まる人も心 散る人も等しく回向して、速やかに無生身を証せん ]

〈 無生身(むしょうしん):涅槃のさとりを得た身。仏身のこと。 〉

板碑は、子息が亡父(慈父)の為、文永二年(1265)九月十日に造立した。釈迦と阿弥陀の三尊種子が刻まれているのが珍しい。

円満寺(えんまんじ)本堂

 玉洞院(ぎょくどういん)阿弥陀三尊図像板碑                       石仏と石塔-目次!

円満寺(えんまんじ) (高野山真言宗)

 板碑(いたび)

*JR熊谷駅前から朝日バス太田駅行きに乗車、「東岡バス停」下車、北西方向へ徒歩 約1.2Km。撮影に際して、御住職に小堂内に入らせて頂いたり(通常は施錠してある)、拓本の撮影をさせて頂いたり、大変お世話になった。感謝!!。

(撮影:平成24年4月22日)