小林家(こばやしけ)阿弥陀種子板碑(埼玉県熊谷市妻沼1466)
蓮華座上に阿弥陀の種子「キリーク」を刻んだ板碑で、鎌倉時代中期 正元二年(1260)の紀年銘がある。碑面に格狭間が彫られているのも珍しい。
小林家 阿弥陀一尊種子板碑 (鎌倉時代中期 正元二年 1260年、緑泥片岩、高さ 104Cm 下幅 39Cm)
身部は、上方に阿弥陀如来の種子を蓮華座上に薬研彫し、下方中央に紀年銘、左右下方に格狭間を作り、その上に願文を刻む |
板碑 頭部
頭部山形、下に二段の切込、額部はなく、身部の輪郭もない。
身部上方、蓮華座上に阿弥陀の種子「キリーク」を刻む | 身部下方、中央に紀年銘、左右の格狭間上に願文を刻む |
身部下方中央に「正元第二暦(1260)、中春時正同心、敬白」の紀年銘を刻む。
身部下方、願文
紀年銘を挟んで左右に各二行「右志者為十、五講衆現世」「安穏後生善、処生極楽也」と刻む。
阿弥陀信仰の為集まった人々(十五講衆)が、「現世は安穏にして、後には弥陀の極楽浄土に生ぜん」ことを願い造立した。
(十五講衆:阿弥陀如来の結縁日にあたる十五日を講衆の名に用いた。)
刻銘:「正元第二暦(1260)、中春時正同心、敬白」 | 刻銘:「正元第二暦(1260)」 |
時正(じしょう):太陽が真東から真西に沈む彼岸の中日のことで、真西に極楽浄土があるとされた。
左右の格狭間(こうざま)
上の中央から左右にのびる鎌倉時代の格狭間で、形状が時代識別の基準となる。
小林家 阿弥陀一尊種子板碑 (鎌倉時代中期 正元二年 1260年)
板碑では珍しい格狭間をつくり、板碑を荘厳している。
日本石造美術辞典(川勝政太郎 著、東京堂出版)では、「野口家種子板碑」として紹介されている。
*JR熊谷駅前から朝日バス太田駅・西小泉・妻沼・妻沼聖天前行きに乗車、「聖天前バス停」下車、南南東方向へ徒歩 約350m。バス通りから、一本東側の道路沿いの更地。隣家の壁に向かって立っている。
(撮影:平成24年4月22日)