地福寺(じふくじ)(千葉県香取市大戸594)
阿弥陀如来の種子を刻む下総型板碑で、鎌倉時代後期 正応四年(1291)の紀年銘がある。
地福寺(じふくじ) 阿弥陀一尊種子板碑 (鎌倉時代後期 正応四年 1291年、黒雲母片岩、高さ 139Cm 幅 37Cm)
身部は、輪郭線を巻き、天蓋の下に阿弥陀如来の種子「キリーク」を蓮台上に、下方に涅槃経に出る偈(げ)、左方に紀年銘を刻む。
板碑 頭部
頭部山形、下に二条線。身部上方に三連の山形、その下に一重線の輪郭を巻く
天蓋の下、阿弥陀如来の種子「キリーク」を蓮台上に刻む | 輪郭の下、涅槃経に出る「諸行無常」の偈(げ)を刻む |
紀年銘は、向かって左側に「正應四年(1291)、口月十口日」、身部下方に涅槃経に出る「諸行無常」の偈(げ)を刻む。
刻銘:「正應四年(1291)」 | 涅槃経に出る偈(げ) |
涅槃経の偈(げ):「諸行無常(しょぎょうむじょう)」「是生滅法(ぜしょうめっぽう)」「生滅々已(しょうめつめつい)」「寂滅為楽(じゃくめついらく)」
[ 諸行は無常である。これ生滅の法である。生滅を滅しおわりて、生も滅もない寂滅を楽しみとする。]
地福寺(じふくじ)釈迦三尊・阿弥陀三尊 種子双式板碑
幅の広い下総板碑で、身部中央に釈迦三尊と阿弥陀三尊を種子で、両側に各五仏を種子で刻み十仏又は十三仏板碑として造立したものと思われる。。
地福寺 釈迦三尊・阿弥陀三尊 種子双式板碑 (年代不明、粘板岩、高さ 134.5Cm 幅 101Cm)
身部左側、阿弥陀三尊を種子で刻む | 身部右側、釈迦三尊を種子で刻む |
身部右側:輪郭内上方、瓔珞のついた天蓋の下に釈迦如来の種子「バク」、右下に普賢菩薩の種子「アン」、左下に文殊菩薩の種子「マン」を蓮華座上に刻み釈迦三尊とする。
身部左側:輪郭内上方、天蓋の下に阿弥陀如来の種子「キリーク」、右下に観音菩薩の種子「サ」、左下に勢至菩薩の種子「サク」を蓮華座上に刻み阿弥陀三尊とする。
板碑 頭部
頭部山形、下に二条線。身部上方の枠外、月輪内に大日如来の真言「ア・バ・ラ・カ・キャ」を刻む
身部は、二重の輪郭内、上に真言、左右に十仏の種子を刻む | 左側、枠内の五仏 | 右側、枠内の五仏 |
右側枠内の五仏は、上から「カ(地蔵)」、「ア(胎大日)」、「バク(釈迦)」、「バイ(薬師)」、「カーン(不動)」が刻まれ、左側枠内の五仏
は「キリーク(阿弥陀)」等が見て取れるが摩耗が激しい。下総板碑によく見られる十仏又は十三仏板碑として造立されたと思われる。
板碑 下方
下方枠外に銘文が刻まれている。
板碑 収蔵の覆屋
正応四年(1291)銘の板碑は、向かって左端。釈迦・阿弥陀 双式板碑は右から二基目。
*JR成田線 「大戸駅」下車、南東方向へ徒歩 約10分。
(撮影:平成23年11月3日)