宇部市立図書館附設郷土資料館(山口県宇部市 島1-4-55)
鎌倉時代中期 文応二年(1261)の古い紀年を持つ整形板碑で、側面に二条線を刻む。山口県下の整形板碑は、鎌倉時代のもはこれ一基で、次は室町時代へと続く。
川上大辻出土石塔婆 (市指定文化財、鎌倉時代中期 文応二年 1261年、石灰岩、高さ 56.8Cm 最大幅 24.3Cm)
宇部市内の虚空蔵山から出土したもので、宇部市郷土資料館に展示されている。石材は、この地方の石灰岩を使用する |
両側面に二条線が刻まれており、同様のものに兵庫県福崎町の神積寺阿弥陀種子板碑(鎌倉中期 弘安九年 1286年)がある。
石塔婆(板碑) 頭部
頭部を低い山形につくる。二条線は、正面はなく左右の側面に入っている。
上方にほぼ同じ大きさで、阿弥陀三尊の種子(中央:キリーク、右側:サ、左側:サク)、下方に種子「ウーン」を刻む。
石塔婆(板碑) 刻銘全文
刻銘全文:「右奉造立卒都婆六千本」「中臺(台)者為藤原國守尊霊」「文應二年(1261)、辛酉、二月彼岸」
「沙弥尼阿弥陀佛尊霊滅罪」「生善往生極楽 證(証)大菩提故也」「藤原口口、敬白」
[ 藤原某が父の國守と母の法名阿弥陀仏の為、文応二年(1261) 春の彼岸に、六千本の小卒塔婆を立て、その中心にこの石塔婆を造立し菩提を弔った ]
彼岸日に法事を選んで行うのは、太陽が真東から出て真西に沈む為で、真西に西方極楽浄土がある信じられていた。
刻銘 ③、向って左三行 | 刻銘 ②、中央 | 刻銘 ①、向って右二行 |
刻銘 ①:「右奉造立卒都婆六千本」「中臺(台)者為藤原國守尊霊」、刻銘 ②:「文應二年(1261)、辛酉、二月彼岸」
刻銘 ③:「沙弥尼阿弥陀佛尊霊滅罪」「生善往生極楽 證(証)大菩提故也」「藤原口口、敬白」
山口県下の石塔婆・板碑は、自然石塔婆が主流で整形板碑は少ない。山口県下で、この文応二年(1261)銘の整形板碑に次いで古い整形板碑は、室町時代中期
明応六年(1497)の曽根六地蔵種子板碑(安山岩)となる。この川上大辻出土板碑は、西日本の整形板碑でも比叡山 無動寺谷阿弥陀一尊種子板碑(鎌倉時代中
期 建長三年 1251年)に次ぐ古い整形板碑で、山口県下の整形板碑では突出した古い紀年銘を持っている。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
川上大辻(かわかみおおつじ)出土石塔婆 展示品説明 (宇部市立郷土資料館)
*JR宇部線「宇部新川駅」下車、北東方向へ徒歩 約8分。郷土資料館は、宇部市教育委員会の裏手(北側)に建っている。
(撮影:平成24年9月21日)