植木観音堂(うえきかんのんどう)曼荼羅石塔婆

 植木観音堂(うえきかんのんどう)(福岡県直方市植木横町)

  顕教の阿弥陀三尊と密教の両界曼荼羅を種子で刻む福岡県最古の在銘石塔婆で、平安時代後期 延久二年(1070)の紀年銘がある。

植木観音堂曼荼羅石塔婆 (県指定文化財、平安時代後期 延久二年 1070年、玄武岩、高さ 85Cm)

観音堂の本尊として、仏壇中央に祀られている。現在、正面に阿弥陀三尊の種子、背面に両界曼荼羅を種子で表し、下に大随求小呪を刻む

  石塔婆 正面

上部に大きく阿弥陀如来の種子「キリーク」、向かって右下に観音菩薩の種子「サ」、左に勢至菩薩の種子「サク」を刻む。

平安時代後期 延久二年(1070)に刻まれた梵字として貴重。右側の写真は、観音堂にある拓本の写真を写したもの。

  石塔婆 背面

   背面は、上部に胎蔵界曼荼羅 中台八葉院、その下に金剛界曼荼羅 成身会の中央を種子で表し、その下に、大随求小呪と紀年銘を刻む。

背面(観音堂にある拓本の写真 背面下部、大随求小呪と紀年銘

刻銘(大随求小呪):「オン、バ、ラ、バ、ラ、サン、バ、ラ、サン、バ、ラ、イ、ンジリ、ヤ、ビ」

「シュ、ダ、ニ、ム、ム、ロ、ロ、シャ、レイ、ソワー、カー」

刻銘(紀年銘):「延久二年(1070)二月十七日立之」

  石塔婆 背面、胎蔵界曼荼羅 中台八葉院

胎蔵界曼荼羅 中台八葉院観音堂にある拓本の写真

弥勒菩薩の種子「ユ」 - - 宝幢如来の種子「ア」 - - 普賢菩薩の種子「アン」
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天鼓雷音の種子「アク」 - - 胎蔵界大日如来の種子「アーク」 - 開敷華王の種子「アー」
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観自在菩薩の種子「ボ」 - - 無量寿の種子「アン」 - - 文殊菩薩の種子「ア」

中央の大日如来四如来(黄文字色)四菩薩(青文字色)

両界曼荼羅を刻んだ作品は、来迎寺両部曼荼羅板碑(京都府向日市)や香高山石造両部曼荼羅(奈良県高取町)があり、胎蔵界中台八葉院を刻んだ作品

には、筒野曼荼羅 自然石塔婆(飯塚市)大日堂胎蔵界曼荼羅板碑(埼玉県寄居町)、金ヶ瀬薬師堂 曼荼羅自然石塔婆(宮城県大河原町)などがある。

  石塔婆 背面、金剛界曼荼羅 成身会

金剛界(こんごうかい)曼荼羅の中核部、成身会(じょうじんえ)観音堂にある拓本の写真

阿弥陀如来の種子「キリーク」
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宝生如来の種子「タラーク」 金剛界大日如来の種子「バン」 不空成就如来の種子「アク」
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阿シュク如来の種子「ウーン」

大月輪の中、中央に金剛界大日如来、上下左右に四如来の種子を小月輪内に刻む。方向は、上方が西で向かって右が北。

曼荼羅 石塔婆

石塔婆は、観音堂の本尊として、両脇には新造の観音菩薩が脇侍として祀られている。

 筒野(つつの)曼荼羅 自然石塔婆                          石仏と石塔-目次!

植木観音堂(うえきかんのんどう)

 板碑(いたび)

*JR筑豊本線 「筑前植木駅」下車、南南東方向へ徒歩 約8分。観音堂は通常、施錠してある。たまたまいらっしゃったお隣の方に開けて頂いた。尚、石塔婆の背面は、後壁が近すぎて見ることができない。

(撮影:平成24年1月30日)